歴史的価値を語り継ぐ「被爆建物の移築再生」

歴史的価値を語り継ぐ「被爆建物の移築再生」

広島市で唯一原爆による火災を免れたため、古い町並みが残る段原地区。
歴史的価値のある被爆建物を次世代に継承するため、1年以上かけて行った移築再生工事。 
移築後の生活や、工事中などの感想をお伺いするため、お施主さま宅へお邪魔しました。

被爆から生き残った、市内では珍しい戦前建物

広島市で唯一原爆による火災を免れたため、古い町並みが残る段原地区。
そういった歴史的背景から、広島市内には戦前の建物は数少なく、たいへん貴重なものとされています。それが地域の再開発による立ち退きのため、取り壊されるという運命に。
この歴史的価値のある建物を次世代まで大切に継承してゆきたい…そう考えたT様は、「古民家を移築する」という決断をされました。

 

新聞の記事で知ったラーバンの活動

何年か前に偶然目にしたという、新聞に載っていたラーバンの記事。
その記事を切り抜いて、大切に保管されていたというT様。
「古民家再生など色々されているという記事で、興味を持ちました。今度何か頼むとしたら、ここに頼みたいな…って漠然と思っていたんです。それから2〜3年後にここの立ち退きが決まって、移築再生をお願いすることにしました。本当にあの時、偶然新聞を見ていなかったらご縁がなかったなって、運命的な物を感じています。」

「移築工事について、親戚には大反対されました。『そっくりそのまま移動するなんて絶対無理だ』って。移築とは言っても絶対なにかの部材を入れ替えたり新しくするんだから、雰囲気が変わってしまったり、違ったイメージになってしまうんじゃないかと、みんなそう思っていたんです。私も不安はありましたが、ラーバンさんを信頼して、賭けてみることにしたんです」

1年以上に及ぶ壮大な工事

移築工事とは、建物を一度解体し、どの部分に使われていた部材かを整理し保管、その後、場所を変えて元のように組み直すという工事です。
間取りや外観は以前の姿を残したうえで、防火規定や構造計画に配慮し、既存の建材をできるだけ再利用しながら、老朽化した部分のみ新建材を使用します。
昔の木造の建築はたいへん手が込んだものであり、今ではこのような建築技術を具現化できる職人(大工、左官、小舞など)は少なくなっています。

解体後の部材保管場所には、随時スタッフが交代で泊まり込み盗難から部材を守る。
解体前の写真と記録を頼りに、ひとつひとつ正確に組み上げる。など…さまざまな努力と職人さんの高い技術で工事は進められました。

まるでそのまま 当時を再現できたことに感動

「担当の設計士さんが熱心に、細かいところまで大工さんに指示して作業してくれたおかげで、何から何まで、当時のまま移築できたことに、私はもちろん親戚一同びっくりしています。」と話すT様。

「いちばん嬉しくて感動したのは、昔つけた傷や落書き、シールの跡(左写真)など、すべて元の位置に元のまま残してあったこと。これには感動しましたね。」
T様が話す『シールの跡』が付いた柱は、老朽化が激しかったため、新建材に入れ替える必要がありましたが、『この汚れこそが必要』と考えた設計士が、柱の表面だけを残して新建材の上に貼りあわせ、当時の様子を再現したものです。

「普通の人なら、こんな汚れいらないじゃないかって思うでしょうね。でも、私にとってはこの汚れがとても大事なもの。これまでのこの家や家族の歴史が刻まれているようなものなんです。設計士さんにそこまで理解してもらえていたことが、何より嬉しかったですね」

この歴史的価値のあるT様邸。今後の展開として、外国人観光客や地域の人々へ、住まい手や地域住民の記憶とコミュニティーの保存継承として、ヘリテージホーム(家の一角を見学できるよう一般公開)として活用していく予定だそうです。

■T様邸 古民家移築再生の詳細はこちら
 戦前の古民家の移築再生【広島市南区段原】